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臭いの元を辿って、車の下に視線を向ける。
そこでようやく、事の次第がわかった。
梅里は笑った。
おかしくて堪らなくなった。
車を指差しながら、思わず声をあげて笑ってしまった。
「くくくっ、ああ、ガソリン、漏れてるじゃん。これじゃあ、荷物を運べないねぇ。ああ、計画が台無しだな」
あの男は、きっと車を調達しに行ったにちがいない。
ガソリンが漏れて動かせないSUVの代わりの車を。
車を調達するならば、この峠を越えて行くような面倒な真似はするまい。
ならば、山の麓へ逆戻りしていった可能性が高い。
梅里は、小走りで群馬側へと道路を下っていった。
一分も走ると、案の定、男の姿が見えた。
炎天下、ふらつく足取りで山道を歩いていた。
その歩き方は、一見、酒に酔っているように見えた。
だが、梅里はすぐにわかった。
「あの男、ブツに手を出したな」
千鳥足の男の後をつけることなど、造作もないことだった。
男は二時間かけて山の麓まで下り、レンタカーショップへと入っていった。
梅里は店先で男の様子をうかがうことにする。
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