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テーブルで書類を書き込んでいる姿。 女性店員の説明を上の空で聞いている表情。 そして、女性店員をなめ回すような視線。 男の目は大きく見開かれ、ドラッグの効果でかなり高揚しているのがわかった。 「運転して大丈夫なのかね」 裏切り者は、あの赤坂という男だった。 教授にこのことを報告しよう。 アゲハヒメバチの正体は赤坂だったと。 そうすれば、俺への信頼は一気に厚くなる。 それから、棚橋の遺体をあそこに置いたままにすることはできない。 いや、待て。 棚橋の遺体こそ、赤坂が裏切り者だという証拠になりうる。 だとしたら、その方法は・・・。 「あれは・・・。そうか、あれを利用できるかもしれない」 男がレンタカーを借りる手続きの一部始終を見ていた梅里は、ある仕掛けを思いついた。 「きっとチャンスはあるはずだ。棚橋の遺体を回収して、ドラッグを奪い返す方法。やるしかない」 梅里は、赤坂の運転する白いセダンを見送ると、レンタカーショップの自動ドアをくぐった。  ※ ※ ※ ※ ※
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