202人が本棚に入れています
本棚に追加
テーブルで書類を書き込んでいる姿。
女性店員の説明を上の空で聞いている表情。
そして、女性店員をなめ回すような視線。
男の目は大きく見開かれ、ドラッグの効果でかなり高揚しているのがわかった。
「運転して大丈夫なのかね」
裏切り者は、あの赤坂という男だった。
教授にこのことを報告しよう。
アゲハヒメバチの正体は赤坂だったと。
そうすれば、俺への信頼は一気に厚くなる。
それから、棚橋の遺体をあそこに置いたままにすることはできない。
いや、待て。
棚橋の遺体こそ、赤坂が裏切り者だという証拠になりうる。
だとしたら、その方法は・・・。
「あれは・・・。そうか、あれを利用できるかもしれない」
男がレンタカーを借りる手続きの一部始終を見ていた梅里は、ある仕掛けを思いついた。
「きっとチャンスはあるはずだ。棚橋の遺体を回収して、ドラッグを奪い返す方法。やるしかない」
梅里は、赤坂の運転する白いセダンを見送ると、レンタカーショップの自動ドアをくぐった。
※ ※ ※ ※ ※
最初のコメントを投稿しよう!