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なんて馬鹿で、なんて愚かな男なのだろう。
赤坂は自分の愚かさを呪った。
そして、最後くらいは心地よくこの世を去りたいとも思った。
ジャケットの内ポケットにあるドラッグ。
震える手で、それをつかもうとした。
が、指先はドラッグではなく、冷たい鉄の塊に触れた。
女はまだ銃を構えている。
怒りを湛えた表情で、こちらをにらんでいた。
怒りに震えてはいても、彼女の艶やかさは失われていない。
日に焼けた肌に、赤い斑点模様がついたベージュのワンピースが良く似合っている。
いや、あの斑点は、俺の返り血だ。
赤坂は声にならない声で、つぶやくように言った。
「さようなら」
内ポケットから振り上げた手には、ロシア製の自動拳銃が握られていた。
赤坂は躊躇なく引き金を引いた。
弾丸は河内の右目を貫いた。
真っ赤な穴をうがち、後頭部から脳漿をほとばしらせた。
即死だったにちがいない。
何の抵抗もなく、真後ろに倒れていった。
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