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入れ替わっているのだ。 自分の車と、梅里という男の車のリモコンドアロック装置だけが入れ替わっている! いつ入れ替えたのかは、わからない。 あるとすれば、キーを刺したまま車から離れ、ダンボール箱を崖下まで回収に行ったときだろう。 エアコンを効かせたままにしていたあのときだ。 入れ替える作業は簡単だったにちがいない。 リング状のキーホルダーから外せばいいだけだから。 そう言えば、この駐車場に着いた時、リモコンドアロックをかけようとして、装置が反応しなかった。 あれは、電池が切れたわけではなく、別の車のリモコンドアロックを操作していたからだったのか。 リモコンドアロック装置さえ入れ替えてあれば、このホテルへ入ってきた後、荷物を入れ替える時間は充分にあったはずだ。 リモコンドアロックでドアを開錠し、シート脇のレバーでトランクを開けることができる。 俺の車の中のドラッグを回収し、男の車で運んできた死体を入れ替えるだけ。 それは、ドラッグの幻覚作用でもなんでもない、単純な仕掛けに過ぎなかったのだ。 「おい、大丈夫か。おまえらが裏切り者だと・・・アゲハヒメバチだと知らせることで、俺は教授の信頼を得ようとしたんだ。アイツの懐へ入り込むための作戦だったんだ。聞け。もうすぐ教授がここに来る。救急車も呼んであるが、教授のほうが先に到着するだろう。なんとかして俺が時間を稼ぐ。だからその間に逃げるんだ。いいか、逃げろ! 立てるか、おい、意識をしっかり持て・・・」
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