あたし

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「おはようございます、 凛さん」 フロントには爽やかな笑顔の 伊藤さんが 立っていた。 「おはよー」 軽い調子で返す。 時間はもう 開店から1時間は 過ぎていた、 まあ、いつもの事よ。 急いで更衣室に入ると 中にはもう あまり人の気配はない。 …あった! 鏡の前で 大好きなオロナミンCを飲みながら 怠そうに化粧直しを している人がいる。 悠チャンだ。 悠ちゃんは 女のあたしから見ても ドキッとするような 色気の持ち主で 長身で ナイスバディ子。 自慢のロングヘアーは 綺麗に巻かれ 肌にフィットした 真っ赤なドレスは これでもか!と 言わんばかりに 彼女を引き立てた。 「おはよー」 悠があたしに 気付いた。 「おはいよー」 あたしも返す。 悠チャンはあたしの 親友だ。 そのズバ抜けた容姿と 人を惑わすテクニックは 尊敬せざる負えなかったし 何より色気ムンムンの いー女は 普段は案外可愛い乙女チャンだと あたしは知っている。 そのギャップがあたしは好きだ。 「二日酔いじゃない?あたし本当今日はグロいわあ。」悠が言った。 「昨日も飲んだからねえ。胃が痛いよ!」 どこの水商売の方も こんな会話はよくあるんじゃないかと 思いますが、 あたし達も そんな感じです。 昨日の反省会をしながら 鏡の前で 念入りに口紅をひいた。 「凛さーん、悠さーん、お客様が入店されましたよー」 ボーイに呼ばれた。 さて、行きますか。 どちらともなく 立ち上がり 二人でフロアに向かった。
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