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夜中、残り数時間で閉店になるという頃に男は案の定店に来た。
予想していたスーツ姿で男は現れ、店の中を見渡した。何かを探しているような視線に不思議に見ていると、やがて俺と目が合って満面の笑に変えた。どうやら俺を探していたらしい。
手をぶんぶん振って子供のように笑う男に俺は思わず会釈してしまった。そうだ、今日は注意するつもりだったのだ。男の陽気な雰囲気に流されてしまった。
今日も変わらず、男は店の前で待機するらしく、店には入って来る気配はない。仕方なく、俺から近づいて注意することにした。
「……すみません」
「わ、わあっ、さ、五月さん……!」
「………」
こいつ、俺の名前知ってた……。
男は俺に話しかけられるとは思ってなかったようで焦った素振りを見せ、だけど満更でもなく嬉しそうに頬を染めていた。
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