第一章

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俺はもそもそと布団から出て制服に着替える。 隣の布団では弟がまだぐっすり眠っていた。羨ましい。 一階に降りて用意されていた朝食のパンを食べ、そのまま学校へ向かう。 『紅、今日は早いんだねー』 学校までは徒歩20分。 いつもの通学路を歩いていると、頭の上から声がした。 「ちぃ、君はいつになったら成仏してくれるんだ?」 『だってー、何にも思い出せないもん。 ずーっとここから動けないし、私も早く成仏したいよーっ』 通学路にはずいぶん前から女の子の霊がいる。 見た目は10歳ほど。 彼女と出会ったのは俺がまだ小さい時だった。 ちぃという名前は、記憶がないという少女に俺がつけた名前。 小さいから、ちぃ。 適当につけた名前なのに、本人はその名前をたいそう気に入った。
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