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私はなにかとオズの魔法使いを思い出す。
知識のないかかし、心のないブリキの人形、勇気のないライオン……それは形を持って手に入れる物ではないのに、それを求めて旅をする、ドロシーの3人のお供が好きだった。
――心のないブリキの人形が好きだった。
心がないから好きな女性に振られたのだと嘆く人形が、滑稽で笑われている姿が、私に似ている気がしたから……。
「はぁ……」
ポケットからラムネ用の、凹凸のある栓抜きをとりだし、ぐっとビー玉に押し込もうとする。
「あ、やらせてやらせて!」
「……はい」
あっさりと元気になった少年にラムネ瓶を渡して、2時間前に座っていたベンチに腰掛け、再びため息をついた。
「……とりあえず、生きて帰って来れたわね」
あのおじいさん、心臓発作で死ななければいいけれど。
――ぽん!
「あはははは、冷たっ」
少年が泡立つ瓶を持って、わたわたとこちらに走り寄ってくる。
「ほら、泡が全部こぼれちゃうよ」
「ありがとう」
受け取ったラムネを傾けると、ヒリヒリするような炭酸の感触が、喉を伝って胃に落ちるのが分かる。
からり――と、溝にはめるのに失敗したビー玉が栓になって、流れが止まる。
少々、炭酸が苦手になってきたようだ。
「ふぅ……残り、飲む?」
「うん!」
少年は間接キッスとか余計なことは言わずに、舌でビー玉を押えて、ゴクゴクと美味しそうにラムネを飲み干した。
「ぷはぁ~」
「あはは。このビー玉欲しいけどとれないんだね? 割っていいかな?」
「駄目だよ……瓶はちゃんと返さないと」
「そっか。じゃあ返してくるから、萌ちゃんはココで待っててね」
彼は自分の分も含めて、瓶を抱えて走りだした。
その背を見送り、ふと――。
「あ、走ると危ないよ」
「え?」
――カツン――バタ――バリン!
「…………」
「…………」
少年が立ち上がり、瓶の欠片を足で道の端に寄せる。そして、何事もなかったように戻ってきた。
「ビー玉」
「良かったわね」
私は彼の服の汚れをはたいて、頭をなでて、このまま握りつぶしてやろうかと考えながら微笑んだ。
ビー玉には、世界が逆しまに映っている。
「兄様が欲しい」
「そう……それがずっと欲しかった物でしょ」
少年は、さも当然と頷く。
「できるの?」
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