第1章

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 カラカラ――と鐘が鳴る。  カラカラ――と鐘が鳴る。  カラカラ――と鐘が鳴る。  カラカラ――と鐘が鳴る。  カラカラ――と鐘が鳴る。  カラカラ――と鐘が鳴る。  「あなたも嫌い……」  ――カラッ……  『そう……そうか……じゃあ仕方ない』  「え?」  呟いて、無理に叫んだ喉が痛んだ。  『僕は萌ちゃんが悲しむことはしない。だから、蒼司くんも元に戻すよ』  「…………」  明るい声だった。  無邪気で、私のことを想っていてくれる声。  『じゃあ、最後に願い事を1つ』  「……あの」  あまりにも、あっさりとした少年に、ついつい気がそがれてしまった。  『早く早く! 時間がないよ!』  「え、あ、ああ――!」  「お金!」  言って、なんて俗物的な発言だったのかと後悔した。  『お金……金ってこの鐘じゃないよね』  カラカラと、  「……違う。ちゃんとしたお金……マネーの方」  それでも、やっぱりお金が欲しかった。  『あははっは……じゃあ、そこの笹を調べて。探し物が見つかるから! もう彼女たちにはいらない物だからね!』  「? それどういう意味なの三田ーー!?」  ザザザ――と突風が吹いた。  巻き起こった砂埃に目を閉じている隙に、少年の気配が消えた。  「……っ」  髪を整えて、スカートをはたく。  「……三田?」  鏡内はシン、と静まり返っていて、返事はない。  しばらく立ちつくしていたが、ジワジワと蝉の声しか耳に届かない。  「笹って」  見渡すと、鏡内の端に七夕の時の笹がそのまま立てかけてあった。  願い事が書かれた紙。  なんだか場違いに、どこかの野球の球団を贔屓するような願い事とか――。  「え?」  その中に一万円札がぶら下がっていた。  赤いペンで、ざっとした不思議な願い事が書かれた一万円札。  ――忘れ物、見つかりますように。  「……三田?」  風が吹いた。  笹がざわざわと鳴る。  そこに小さな声が混じった気がした。  『人間って、よく分からないや……それと、パンツまた見えちゃった』  結局のところ、この物語がどんな意味を持っていたのかは誰にも分からなかった……。  三田という少年がいた形跡すらなかった。  ただ、神社の縁の下には、誰かが寝ていた跡があって、駅前の道端には割れたラムネの瓶が2つあって、
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