第1章

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私のポケットにビー玉がはいっていて、見つめている手の中には1万円札札があった。  でも、それだけだった。  「サンタクロースねぇ」  この暑い太陽の下で……。  やっぱり白昼夢でも見ていたのだろうか?  そんななずはないと分かっていても、もう、彼の声すら覚えていない。  私はビー玉を太陽にかざした。  それはもう、緑色ではなく、白く白く輝くだけだった。  「…………ん? なっ!?」  ふと、遠くで兄様と白河さやかが並んで立っていた。  あの怪我で、本当に病院を抜け出したのだ!  「まったくなにやってるの……」  頭を抱えそうになって、ふと、手を止めた。  そして背筋を伸ばしてニヤリと笑ってやる。  残っていた。  この心には彼の証が残っていた。  ブリキのロボットだって、心を手に入れた。  それは形があるものではないのだ。  ――勇気を出して。  「兄様!」  青い空に、黄色い声が木霊した。  ぎょっ、と兄様が振り返り、おてんこ娘が目を丸くしてから微笑んでいた。  そして逃げる。  二人とも逃げてしまう。  だから追いかけよう。  なんだか走れないらしく、ひょこひょこ、と歩いている背中を目指した。  さて、その背中に飛び込むか、怪我の心配をして上げるか……。  私はわずかな制限時間の中で、その2つの選択肢の結果を――どうなるか分からない未来を、ひどく楽しんでいた。
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