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困ったことがあったら、まず笑う。それで、自分がまだ大丈夫だと分かれば自然と落ち着く――と。
金策は純粋なプラスにはならないので、まずは財布の線だろう。
今日1日で行った場所を思い出す……。
家、病院、駅。商店街、食堂、もう一度病院。
そして今いる神社……その間を結ぶ果てしない道、
道。道。
「あぁ、もぅ! どうして今日に限ってこんなに動き回っているの私は!」
「うわっ!」
「……?」
唐突に割り込んできた声に、きょとん、と目を丸くする。
「なに? 今の声、足下からしなかった?」
はしたないけれど、上半身を曲げて、社の縁の下を覗き込む。
「ご、ごめんなさい! 変な虫とかはいるけど、つい寝心地がよくて住み着いてました~!」
「え?」
暗がりに、赤い目がランランと輝いていた。
最初は猫かと思ったが、それにしては大きい。
ごそごそと影が太陽の下に姿を現した。
子供。
真っ赤な――まるでサンタクロースのような、もこもことした服を着込んだ少年が、必死の勢いで頭を下げている。
「ごめんなさい! ごめんなさい!」
「あなた誰?」
「え……あ、すみません。僕はサンタっていいます。数字の三に、田んぼと書いて三田です」
三田?
三田……。
「はぁ~……」
頭をおさえてため息をついてしまう。
最近、自分を含めた世界全体が、あの、サンサンおてんこ娘に影響を受けた気がしてならない。
「いいですよ、私に謝らなくても……別ににここの管理人ってわけでもないですから」
「そうなんですか?」
少年がにっこりと笑う。
私がそれっきり黙ってしまうと、少年は手持ちぶさたなのか、うろうろとしながら、こちらの様子をうかがっている。
外見は自分よりもかなり年下に見えるし、雰囲気も年相応といったところか。
「……ねぇ、あなた」
「はい!」
声をかけただけで、ビシッ、と気をつけされる。
「あのね……そんな、とって食べたりしないから、こっちに来なさいな」
「はい」
彼は物怖じすることなく、隣にちょこんと腰掛ける。ちょこんとだ全く。
「……最初に私も名乗って置くけど、私は上代。カミシロは上下に上に……」
「知ってます」
「…………」
「萌ちゃんですよね?」
屈託なく少年は笑っている。
「あなた誰?」
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