第1章

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 困ったことがあったら、まず笑う。それで、自分がまだ大丈夫だと分かれば自然と落ち着く――と。  金策は純粋なプラスにはならないので、まずは財布の線だろう。  今日1日で行った場所を思い出す……。  家、病院、駅。商店街、食堂、もう一度病院。  そして今いる神社……その間を結ぶ果てしない道、  道。道。  「あぁ、もぅ! どうして今日に限ってこんなに動き回っているの私は!」  「うわっ!」  「……?」  唐突に割り込んできた声に、きょとん、と目を丸くする。  「なに? 今の声、足下からしなかった?」  はしたないけれど、上半身を曲げて、社の縁の下を覗き込む。  「ご、ごめんなさい! 変な虫とかはいるけど、つい寝心地がよくて住み着いてました~!」  「え?」  暗がりに、赤い目がランランと輝いていた。  最初は猫かと思ったが、それにしては大きい。  ごそごそと影が太陽の下に姿を現した。  子供。  真っ赤な――まるでサンタクロースのような、もこもことした服を着込んだ少年が、必死の勢いで頭を下げている。  「ごめんなさい! ごめんなさい!」  「あなた誰?」  「え……あ、すみません。僕はサンタっていいます。数字の三に、田んぼと書いて三田です」  三田?  三田……。  「はぁ~……」  頭をおさえてため息をついてしまう。  最近、自分を含めた世界全体が、あの、サンサンおてんこ娘に影響を受けた気がしてならない。  「いいですよ、私に謝らなくても……別ににここの管理人ってわけでもないですから」  「そうなんですか?」  少年がにっこりと笑う。  私がそれっきり黙ってしまうと、少年は手持ちぶさたなのか、うろうろとしながら、こちらの様子をうかがっている。  外見は自分よりもかなり年下に見えるし、雰囲気も年相応といったところか。  「……ねぇ、あなた」  「はい!」  声をかけただけで、ビシッ、と気をつけされる。  「あのね……そんな、とって食べたりしないから、こっちに来なさいな」  「はい」  彼は物怖じすることなく、隣にちょこんと腰掛ける。ちょこんとだ全く。  「……最初に私も名乗って置くけど、私は上代。カミシロは上下に上に……」  「知ってます」  「…………」  「萌ちゃんですよね?」  屈託なく少年は笑っている。  「あなた誰?」
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