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とって食べる気はなかったが、とって食べられることは考えていなかった。その前に、ちゃん、って……。
「そう言えば、この縁の下に住み着いていたとか言ってたわね……本当に何物なの?」
「だから上代三田ですよ」
「いや、名前じゃなくて素性……上代?」
「蒼司くんと、さやかの子供です」
間髪入れずの返答だった。
……あ、頭が痛い。
「それじゃあ」
「あ、ちょっと待ってください!」
がっし、と足首をつかまれる。見ると、少年は地面につっぷしていた。
「…………」
「痛い」
「顔、上げないでくださいね」
「なんで?」
「スカートが短――」
言葉を待たず、まるで油をさしすぎた機械のように、挙動になんの躊躇もなく少年が顔を上げる。
「…………あ」
「…………見てる?」
「いいえ」
「何色?」
「しましま模様なんで一口には」
「…………」
「…………青と白で……むぎゅ!」
少年はそれだけ口にして、私の足に踏まれる。
果てしなく広い空を見上げた。
白い雲。
青い風。
白い太陽。
青い私のため息。
「私って、こんなキャラだったかしら……」
白い太陽。
青い風。
白い雲。
少年は果てしなく広い空を見上げていた。
私は遠くから、そんな兄を――2人の少年少女の姿を見つめていた。
一人は兄。両親がいなくなり、時間を惜しんで私の面倒を見てくれるのに、時間を見つけては、もう1人の少女の元へと出かけていた。
一人は他人。母親を失い、友達がいないという少女。彼女のことはあまり知らなかったけど、兄と一緒にいるということが問題なのだ。
白い太陽。
青い風。
白い雲。
私は果てしなく青い空の下で、2人の姿をじっと見つめていた。
………………。
…………。
……。
――すたすた
――てくてく
――すたすた
――てくてく
――すたすら――ぴた
――てくてく――どん
「痛たた!」
「……ちょっと」
振り返って、鼻をさする少年に向き直る。彼は涙目でこちらを見上げていた。
「なんで急に立ち止まるの? 鼻が赤くなって、トナカイみたいになったらどうするんだよ!」
ゆく分からない抗議の声を上げられる。
私はジト目で彼を見下ろした。
「なんで後をついてくるのよ?」
「パンツ見たことまだ怒ってるの?」
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