第1章

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 とって食べる気はなかったが、とって食べられることは考えていなかった。その前に、ちゃん、って……。  「そう言えば、この縁の下に住み着いていたとか言ってたわね……本当に何物なの?」  「だから上代三田ですよ」  「いや、名前じゃなくて素性……上代?」  「蒼司くんと、さやかの子供です」  間髪入れずの返答だった。  ……あ、頭が痛い。  「それじゃあ」  「あ、ちょっと待ってください!」  がっし、と足首をつかまれる。見ると、少年は地面につっぷしていた。  「…………」  「痛い」  「顔、上げないでくださいね」  「なんで?」  「スカートが短――」  言葉を待たず、まるで油をさしすぎた機械のように、挙動になんの躊躇もなく少年が顔を上げる。  「…………あ」  「…………見てる?」  「いいえ」  「何色?」  「しましま模様なんで一口には」  「…………」  「…………青と白で……むぎゅ!」  少年はそれだけ口にして、私の足に踏まれる。  果てしなく広い空を見上げた。  白い雲。  青い風。  白い太陽。  青い私のため息。  「私って、こんなキャラだったかしら……」  白い太陽。  青い風。  白い雲。  少年は果てしなく広い空を見上げていた。  私は遠くから、そんな兄を――2人の少年少女の姿を見つめていた。  一人は兄。両親がいなくなり、時間を惜しんで私の面倒を見てくれるのに、時間を見つけては、もう1人の少女の元へと出かけていた。  一人は他人。母親を失い、友達がいないという少女。彼女のことはあまり知らなかったけど、兄と一緒にいるということが問題なのだ。  白い太陽。  青い風。  白い雲。  私は果てしなく青い空の下で、2人の姿をじっと見つめていた。  ………………。  …………。  ……。  ――すたすた  ――てくてく  ――すたすた  ――てくてく  ――すたすら――ぴた  ――てくてく――どん  「痛たた!」  「……ちょっと」  振り返って、鼻をさする少年に向き直る。彼は涙目でこちらを見上げていた。  「なんで急に立ち止まるの? 鼻が赤くなって、トナカイみたいになったらどうするんだよ!」  ゆく分からない抗議の声を上げられる。  私はジト目で彼を見下ろした。  「なんで後をついてくるのよ?」  「パンツ見たことまだ怒ってるの?」
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