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とても可愛い絵だね――と。
子供だったからか、それが本当に心の底からの言葉だと言うことは分かったのに、私はその絵を破いて捨てた。
青い太陽。
白い風。
青い雲。
私は広くなった冬の夜空の下で、じっ、とその絵に別れを告げた。
「まずここね」
商店街の真ん中に立って、私は呟いた。
広いと言えば広いが、特に買い物したわけではなく、食堂でご飯を食べただけなので、探す範囲は限定されている。
少年は途中の道で拾った木の枝で、道草をかきまぜるという道草をくっていた。
「ちょっと……一緒に探してくれるんでしょ?」
「あ、うん」
とっとこ、と駆け寄ってくる。
彼は辺りを眺めて、近くにある街灯をしげしげとさすっていた。
「でもドジだなぁ……そんな大切な財布をおとすなんて」
「仕方ないでしょう」
「なにが仕方ないの?」
「それは……色々ありまして……」
兄様が刺されたり、病室にあの女が来たり、病室で兄様に“あ~ん”とか言ったり……。
なんだか頬が熱い。
「なんでもいいから、早く探しましょう!」
「了解」
彼は敬礼をして、ばたばた、と辺りを走り出しす。
「はぁ……」
私はため息をついて、とりあえず食堂と、駅向こうにある交番に顔を出してみることにした。
………………。
…………。
……。
「なかったね」
「そうね……」
バス停のベンチに座りながら、私は頬杖をついてため息をついていた。
「でも良かったね。食堂のおばさんがジュースをくれたよ」
「……そうね」
彼は美味しそうにラムネの瓶に口をつけていた。
キラキラと、オズの魔法使いのように、エメラルド色の光が少年の顔を染めている。それに気づいて、彼は無邪気に瓶を回転させて笑っていた。
「……はぁ」
再びため息。
食堂は、財布をだした覚えがあったので一番期待していたのだが……。
駅前では、キャキャ、と子供が走っていた。
それに、とぼとぼと歩くご老人達。
なんとなく、自分と少年にそれを重ねて、なんだかバカみたいに悲しくなっている。
「飲まないの?」
「今は喉が渇いてないから……いる?」
ううん、と首を振る。
「ねぇ……元気だしてよ。萌ちゃんが寂しい顔してると、僕も寂しんだよ」
「…………」
見ると、彼はまた、真剣な顔でこちらを見上げていた。
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