第1章

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 とても可愛い絵だね――と。  子供だったからか、それが本当に心の底からの言葉だと言うことは分かったのに、私はその絵を破いて捨てた。  青い太陽。  白い風。  青い雲。  私は広くなった冬の夜空の下で、じっ、とその絵に別れを告げた。    「まずここね」  商店街の真ん中に立って、私は呟いた。  広いと言えば広いが、特に買い物したわけではなく、食堂でご飯を食べただけなので、探す範囲は限定されている。  少年は途中の道で拾った木の枝で、道草をかきまぜるという道草をくっていた。  「ちょっと……一緒に探してくれるんでしょ?」  「あ、うん」  とっとこ、と駆け寄ってくる。  彼は辺りを眺めて、近くにある街灯をしげしげとさすっていた。  「でもドジだなぁ……そんな大切な財布をおとすなんて」  「仕方ないでしょう」  「なにが仕方ないの?」  「それは……色々ありまして……」  兄様が刺されたり、病室にあの女が来たり、病室で兄様に“あ~ん”とか言ったり……。  なんだか頬が熱い。  「なんでもいいから、早く探しましょう!」  「了解」  彼は敬礼をして、ばたばた、と辺りを走り出しす。  「はぁ……」  私はため息をついて、とりあえず食堂と、駅向こうにある交番に顔を出してみることにした。  ………………。  …………。  ……。  「なかったね」  「そうね……」  バス停のベンチに座りながら、私は頬杖をついてため息をついていた。  「でも良かったね。食堂のおばさんがジュースをくれたよ」  「……そうね」  彼は美味しそうにラムネの瓶に口をつけていた。  キラキラと、オズの魔法使いのように、エメラルド色の光が少年の顔を染めている。それに気づいて、彼は無邪気に瓶を回転させて笑っていた。  「……はぁ」  再びため息。  食堂は、財布をだした覚えがあったので一番期待していたのだが……。  駅前では、キャキャ、と子供が走っていた。  それに、とぼとぼと歩くご老人達。  なんとなく、自分と少年にそれを重ねて、なんだかバカみたいに悲しくなっている。  「飲まないの?」  「今は喉が渇いてないから……いる?」  ううん、と首を振る。  「ねぇ……元気だしてよ。萌ちゃんが寂しい顔してると、僕も寂しんだよ」  「…………」  見ると、彼はまた、真剣な顔でこちらを見上げていた。
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