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「さすが男の子。頼もしい」
「いや、軽いから。
志緒の部屋でいいんですか?」
「ええ、お願い」
言いながら、珠緒さんは
志緒の部屋に足を向ける。
志緒が首を痛めないように、
自分の方にもたれさせた。
えらのあたりにかかる息が
妙になまめかしくて、
居たたまれない気分になる。
──ああ、
今日女と会ってきてなくてよかった。
妙な安堵は妙に心地が良くて、
妙に素直な気持ちになる。
「こっち。お願い」
「はい」
志緒のふらふらする足を
ぶつけないように、
あちこち気を配りながら
足を進めた。
珠緒さんは志緒の部屋の
ドアを押さえながら、
そんな俺の様子を見て
ふふっと笑い落とす。
「?」
「いいのよ、別に緊張しなくて」
「あ、いえ……」
俺の中の何を
見透かされたわけでもないのに、
たじろいでしまう。
「うちの大事で可愛いお姫様はね、
拓海くんか誠司くんにしか
あげなーいって思ってるから」
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