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灼け付く胸の中で、
くらくらとマーブルが
不愉快な幾何学模様を彩った。
ぱりぱりと乾いていく心じゃ、
涙なんか出るわけない。
せめて、もう元の色が
判らなくなるほどに
混ざってくれればいいのに。
そうしたら、
善悪も清濁も
いっしょくたにして
飲み込めるのに。
「あ……も、
もう……タクミ……ッ」
慣れて来たのか、
自ら腰を押し付けて
強請る女に嫌気がさしてくる。
その女の耳元に、
わざと低く掠れた声で
ささやきかける。
「……いけよ。好きなだけ」
「は、あ……」
こんなふうに
男の声に余裕がないと、
嬉しいんだろ。
男が自分の体に
溺れてると思うと、
感じるんだろ。
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