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何度も何度も、
自分に言い聞かせた。
それでも煙草を摘む
指先が震える。
それに腹が立って、
水溜まりの中に吸い殻を投げ捨てた。
ふらふらと雨の中に出ていって、
濡れるのも構わず空を睨み付ける。
がくり……と、
ぬかるんだ地面に膝をついて
顔を覆った。
「……助けて」
誰が泣くか、畜生。
「助けて、誰か。
……助けて」
情けない言葉、
吐くんじゃねえよ。
「志緒。
……志緒……」
刻一刻と。
身体中の血が、
冷たく凍り付いて行くのを。
自分の心を、覚悟がざくざくと
削り取っていくのを感じながら。
こんな体がどうなったって、
俺自身は誰にも
侵されることはないと。
本気で思えるようになるまで、
俺は一晩中そうしていた。
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