崩れ然る固定観念

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  相変わらず清廉な空気の漂う 部屋の中、 風呂上がりの藤堂さんは 浴衣の帯を締めながら、 本棚を眺める俺の背後に座った。 俺は活字など大嫌いだが、 藤堂さんの蔵書の中から おかしなものを見つけ出しては 眺めるのが趣味だった。 はっきりと 聞いたわけではないが、 藤堂さんはヨーロッパの 生臭い歴史がけっこう好きらしい。 第二次世界大戦の頃、 日本を含む枢軸国と呼ばれた諸国の あれこれをタブロイド的な視点で 眺めた怪しげな本をパラ見した時には、 日本人が何となく ドイツとイタリアに感じる 親和的な感情はこれか、 などと思ったりした。 昔のドイツの軍服とか、 何も知らない俺が見ても ただただかっこいいもんな。 .
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