1224人が本棚に入れています
本棚に追加
「志緒ちゃんは
すぐそばにいるのに、
どうしてそこまで
自分の身を削る。
普通の男は、何を置いても
好きな女の子を抱きたいと
思うもんだろう」
とぷとぷ……と
うまそうな音を立てながら、
藤堂さんはいつものグラスに
安い方のヘネシーを注ぐ。
俺は飲んでいた紅茶に
それを少し注いでもらって、
溜め息をついた。
「……あれは、
世間で起きてる妙なことなんか
見聞きしなくていい」
「あれ、か」
俺の些細な言い回しが
気に入ったのか、
藤堂さんはクッと
肩を揺らして笑う。
指一本触れてない女を
そんなふうに呼ぶことは、
そんなにおかしいことだろうか。
.
最初のコメントを投稿しよう!