崩れ然る固定観念

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  「志緒ちゃんは すぐそばにいるのに、 どうしてそこまで 自分の身を削る。 普通の男は、何を置いても 好きな女の子を抱きたいと 思うもんだろう」 とぷとぷ……と うまそうな音を立てながら、 藤堂さんはいつものグラスに 安い方のヘネシーを注ぐ。 俺は飲んでいた紅茶に それを少し注いでもらって、 溜め息をついた。 「……あれは、 世間で起きてる妙なことなんか 見聞きしなくていい」 「あれ、か」 俺の些細な言い回しが 気に入ったのか、 藤堂さんはクッと 肩を揺らして笑う。 指一本触れてない女を そんなふうに呼ぶことは、 そんなにおかしいことだろうか。 .
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