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「普通の17歳の少年には、
自分で自分の選択を意識する
切実さなんてないよ。
拓海」
「……まあ、
夜な夜なバーで歌う
17歳はそうそういねえな」
「お前はものが視え過ぎてる。
しんどければしんどいほど、
磨かれるその声も。
人心を完全に掌握して、
その声が更にお前を能くする。
そして、数多の視線に苛まれる。
……才能を持つというのは、
それだけで可哀想なことだ」
「……」
「……救ってもらえよ、
志緒ちゃんに。
あの娘は優しい子だから、
お前の慰めになる」
「そんなことのために、
あいつを壊したくねえ」
「拓海」
ガチャン、とカップを
テーブルに置くと、
藤堂さんはわずかに眉をひそめた。
「……自分でも判ってんだ。
俺、どっかおかしい」
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