崩れ然る固定観念

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  ──それは、 何のことだろう。 俺にくれたギターのことだろうか。 藤堂さんは過去の話を ほとんどしないから、 何に基づいた弁なのかも よく判らない。 判るのは、 ひとつひとつが とても重いということだけだ。 「バカな人間相手に くだらない政治なんかしてないで、 志緒ちゃんに向き合ってやれよ。 まだ子どもだけど、 志緒ちゃんだって女なんだ。 お前が苦しんでたら、 それを一緒に感じたいって きっと思ってくれる」 「……そんな価値ねえよ。 俺、あいつ汚したくねえ……」 拓海、と。 しょうがないなと言うように、 藤堂さんは溜め息をついた。 .
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