崩れ然る固定観念

37/40
1224人が本棚に入れています
本棚に追加
/40ページ
  ゚・*:.。..。.:*・゚・*:.。..。.:*・゚ 最近、知り合いのロックバンドの ヴォーカル役も臨時で ちょいちょい勤めるようになった。 夕方からバイトで時間が 取れなくなるやつがメンバーにいて、 どこの体育会系なんだか 朝からの練習に駆り出された、 その帰り。 夜まで少し仮眠でも取るか、と ぼんやり考えながら 門扉に手をかけた瞬間。 「あら、拓海くん! おかえりなさい!」 その声に、ぎくりとする。 少し低いから違うと判っていても。 顔を上げると、 志緒の母親である 珠緒さんがウッドデッキに繋がる 開口部から顔を覗かせ、 俺に向かって手を振っていた。 「……こんにちは。 ただいま、です」 いくら女の扱いに 慣れて来たと言ったって、 志緒の母親となると話は違ってくる。 珠緒さんには、 たぶん自分の母親よりも ずっと頭が上がらない。 .
/40ページ

最初のコメントを投稿しよう!