崩れ然る固定観念

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  「ちょっとごめんなさい、 来てくれる」 「え?」 「大変なの。志緒が」 ──志緒の名前を出されて、 無関心でいられるとしたら。 そいつはたぶん、俺じゃねえ。 カバンを玄関から放り込み、 慌てて両方の家の 門扉を通り抜けて、 珠緒さんが手招きをする ウッドデッキに駆け寄った。 「──……」 足を揃えて窓に身体を寄せる 珠緒さんのすぐそば、 フローリングの上で 普通に寝息を立てながら 仰向けで志緒が転がっていた。 「この通り、 こんなところで寝ちゃったのよ」 「……? はあ」 何かあったのかと思った分、 拍子抜けしてしまう。 首を傾げながら 珠緒さんを見上げると、 彼女はにこりと微笑んだ。 .
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