崩れ然る固定観念

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  「拓海くん、悪いんだけど。 この子、部屋まで運んでくれない?」 「……」 ラッキースケベって こういう時に使うんだっけ。 知らねえけど。 「お邪魔します……」と ウッドデッキから直接上がり込むと、 懐かしい櫻井家のにおいがした。 昔はよくこうしてここから 遠慮なく上がり込んだものだが、 俺が中学に上がってからは その機会もなくなっていた。 少し口を開けてすうすうと 気持ちよく眠りこけている志緒は、 ロングの淡いピンク色の ワンピースを着ている。 その胸元はレースで 鎖骨まできっちり詰まっていて、 さすが珠緒さんだな、 なんて思った。 胸の開いた服なら、 たぶん俺を呼びつけたりは しなかっただろう。 というか、 そういうものを着せない気がした。 「ごめんなさいね。 この子一度寝たら起きないから」 「変わってないですね、 そういうところ」 何も感じてないふりをしながら、 屈んで志緒をそーっと抱き上げる。 よく引っ付いて来ていた 子どもの頃とは違い 全体的にふにふにしていて、 どきっとした。 .
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