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「いや、そうともいえない。つかんで握り潰(つぶ)す。圧倒的な握力があるなら効果的な方法だ。握撃は武術の指導書にもある立派な攻撃の技だ。見ろ!」  タツオはジョージにうながされて、カザンに注目した。なにかを呪文のようにとなえながら、額(ひたい)には汗が浮かび、顔は真っ赤に上気している。 「ロックしたテルの指がアキレス腱に喰いこんでいるんだ。骨は折れなくとも、相当な苦痛のはずだ」  闘いは膠着(こうちゃく)していた。カザンはサッカーボールでも蹴るように足を離そうとし、テルは横になったまま全力でその足首に握撃を加えている。カザンを応援していた場内の歓声が静まってきた。観客席の上方から生徒のひとりが叫んだ。 「暁島会(ぎょうとうかい)万歳、逆島(さかしま)家万歳!」
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