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 貴賓席の将軍連中が顔をあげて、アルプスのように険(けわ)しい観客席をにらんだ。もう将官からは逆島派は一掃されている。進駐官養成高校にまで根強く元近衛(このえ)四家・逆島家に忠誠を尽くす者が残っているのが腹立たしいのだろう。あそこで高みの見物をしているお偉方(えらがた)の誰ひとり、自分が須佐乃男(すさのお)の主操縦者になることを望んではいないのだ。タツオのなかで負けじ魂がめらめらと燃え立った。 「テル、がんばれー!」  両手をメガホンにして応援してから、タツオはジョージにいった。 「さっきの言葉、どういう意味なんだ?」  誰でも似たようなことを考えると、ジョージはつぶやいていた。青い畳の試合場から目を離さずに天才児はいう。
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