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「横になって身体の大部分を防御し、てのひらに触れたものをとにかく全力でつかみ、握撃を加える。カザンに一矢(いっし)を報いるためにね。テルは自分の握力にすべてをかける作戦なんだろう。さあ、ほんとうの勝負はここからだ」  うぉーっと無数の雄叫びが大講堂に流れた。誰もが息を呑んでいる。テルの爪(つめ)がアキレス腱の肌を破ったのだろう。カザンの純白の袴(はかま)の裾(すそ)が赤い血をなすって汚れている。 「貴様のような下等なやつが」  カザンが怒りに震えていた。つぎの瞬間、両足を踏ん張り腰を沈め、カザンは飛びあがった。もちろん強制催眠中のテルは足首を離さない。全力でジャンプしたカザンはテルの強力な腕の力で、倍の勢いで畳に引きもどされることになる。 「まずい!」
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