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 ジョージが叫んだ。これが「呑龍」にかけられていなければ、手を離し避けることもできただろう。だが、そこまでの自由は強制催眠下では許されていないようだった。カザンの左足のかかとがまっすぐにテルの右手首に落ちてくる。 「はっ!」  骨の折れる鈍く湿った音がタツオのところまで響いてきた。思わず顔をしかめてしまう。 「くそっ、終わったな」  ジョージが投げやりにいう。カザンは足を思い切り振り、手首が折れてもまだ握撃を加えているテルの右手を振り払った。 「手間をかけさせるな! この返礼は高くつくぞ。その右腕をもらう」  カザンは折れた手首をさらに踏みつけた。指は足首をつかんだ形のまま開いている。それを真上から踏み潰す。つぎは上腕と肘(ひじ)関節だった。骨の折れる音が連続して鳴る。
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