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顔を真っ赤にしたカザンは大観衆の前で恥をかかされ逆上していた。武術などもう関係なかった。幼い子どもが長靴で水たまりをめちゃくちゃに踏むように、ひたすらテルの右腕を破壊していく。
観客席の女性たちからは悲鳴が上がった。袴の裾を血で濡らし、東園寺(とうえんじ)家の時期当主が残酷な舞を踊っていた。白い骨が肌をやぶって外に飛び出している。解放骨折だ。その骨の先端をさらに踏みつけた。
「もう止めさせろ!」
場内の多くの生徒たちと同じように、タツオも叫んでいた。「呑龍」は残酷な技だ。強制催眠中はギブアップさえ許されない。魂を抜かれたようになっていた審判の少年がカザンの背後から組みついた。なんとか血まみれの試合が終了した。
「救護班、きてください」
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