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「なるほどね、誰でも似たようなことを考えるものだ」  ジョージがそうつぶやいた。タツオは試合場の中央を眺め、目を見張った。テルは胎児(たいじ)のような恰好(かっこう)で横たわったままだが、「呑龍(どんりゅう)」のリズムを刻んだままカザンが焦(あせ)っている。 「なにがあったんだ、クニ」  セコンド役のクニが手を打って返事をする。 「カザンが顔面にローキックにきたところを、テルが足首をつかんだんだ」  カザンは必死に足を自由にしようとしていたが、がっしりとつかんだテルの右手は二度と離れなかった。鋼鉄の罠(わな)にでもはまったようだ。クニが浮かれていった。 「テルの馬鹿力はとんでもないからな。あいつの握力80キロ以上あるって噂(うわさ)だ。あのままカザンの細い足首へし折っちまえばいいのに」  タツオは低い声でいった。 「そんなの無理に決まってるだろ」
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