2 それは1st下心

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“大分前から”ってことは。 今日だけじゃなく、前からってこと、だよね…… 「……大分前?」 一応聞いてみれば、彼は困ったように笑って、そして少し考えるようにすると。 「付き合いだしてから、だな」 苦笑を洩らす。 あぁ、これこそ、なんてこった! 彼は実はずっと私が何かを気にしている事に気がついていて。 それを言わないで待っててくれたんだ。 けれど。 私がずっと思っていた事は、なんてことない、言えばとても照れくさいだけの事で。 たかがそれだけに言えずにいる事すらなんだか照れくさくて。 もうどうしようもない自分に、もう一人の自分が“何やってんのあんた”って呆れてる。 「あー……こんなことは聴きたかねぇが、」 「う、うん?」 「別れたい、とかじゃねぇよな?」 こくこくこく。 思い切り首を縦に振る。 やだやだ、それは絶対ない。 早く、言わなくちゃ。 顔が赤くなるまま私は口を開いて。 「あの、ね」 「あぁ」 少しばつが悪そうなのは、勘弁してほしい。 「手、つなぎたい、だけなの」 よし、言った! 赤い顔のまま落した視線はうろうろ落ちつかない。 「あー……」 その声に顔を上げれば。 頬を染めた彼が口元を片手で覆って。 私と同じように視線を揺らしていた。
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