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奏と付き合いだしてから、自分がこんなにも奏に弱いのかと思い知った。
たかが隣を歩くだけで緩んでくる口元。
不意に触れられた腕なんかに心臓を跳ねさせて。
見上げる瞳に目尻が下がる。
新庄はこんな俺に顔をひきつらせたが、何がおかしい?
隣にいる、ただそれだけで満足している俺だったが、ふと奏の様子が気になった。
何か言いたげな瞳。
求めるように見上げられるそれに、思うのは男なら必ずたどり着く下心。
だがきっと、
……コレはぜってぇ違うな。
とりあえず、その下心は別な引き出しにしまい込んだ。
今まで周りにいた女とは違う。
目の前にいるのは、すげぇ大事にしたい存在。
隣を歩くだけでうるせぇ心拍と満足感。
たまに思い切って出した手につながる小さいそれは、強く握ると壊れそうで、慣れないそれは今もまだ慣れる事はねぇ。
だが、なにも言わずに自然に手がつながる事はまだない俺達だから、何度その手をつかもうとしたかわからない小せぇ勇気は未だ3分の1程度しか発揮できてねぇ。
……これじゃあ、新庄の野郎にへたれ呼ばわりされてもおかしくねぇか
浮かんだ見慣れた顔を頭から追い出して、とうとう俺は奏に聞いた。
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