3 それは繋がる手に導かれる

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「しかし、アレだな」 「え?なぁに?」 繋がった手、寄り添う奏は俺を見上げる。 「奏の手、ちいせぇな」 少し持ち上げた手の中、俺が握りこむその手はつなぐというより、そう、握りこむ。 「俺が手を離せばすぐ離れちまいそうだ、」 持ち上げたそのまま手を開けば、その小さい手は俺の指をつかんだ。 「やだ、」 「っ」 「こうすれば、離れないでしょ?」 指に絡まるコレはいわゆる恋人つなぎってやつだったか。 くすぐってぇな、そう思うのはきっとこの手の感覚じゃなく、この行為そのもの。 繋がった手を揺らす奏は楽しそうに頬染めて、そして俺を見上げた。 「秀?」 俺を呼ぶその声は耳に心地いい。 「うん?」 見下ろした奏は思った以上に近く、少しためらいがちに口を開く。 「あのね、」 「あぁ」 「いつも、手、つないでもいい?」 …………っ、 コイツは俺を萌え殺す気か。 苦しい胸のあたり、服をつかんだ俺にきわめつけ、 「……だめ?」 伺うような上目づかい。 女がやるそれを俺に向けるなと今まで何度思ったかしれない。 だが、相手が奏だといくらでも向けてほしい、いやむしろずっとこのままでもいいとすら思えるんだから不思議だ。
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