4 それはどれも君との初めて

6/6
前へ
/94ページ
次へ
「くくっ、」 不意に頭上からくつくつと笑い声が降ってきて。 顔を上げれば秀は未だ繋がった手に力を入れた。 「あー、悪ぃ」 「うん?」 「いや、なんつーか……」 少し歯切れが悪く、でも一度目を伏せて私を見ると、秀は僅かに頬を染めて苦笑を洩らす。 「すげぇ嬉しすぎて……」 「……?」 「まさか自分がこんな気持ちになるなんて思ってもみなかったんだ」 カップはまたテーブルへ戻されて。 今度はその手が私の頬へ伸びる。 緩く撫でられる頬に少し目を細めてじっと彼を見上げれば。 「こんな感情、初めてだ」 呟く。 「手をつなぎたいとか、髪を触りたいとか、頬を撫でたいとか、こんなに人に触れたいと思った事が……」 紡ぐ言葉の通りに触れられるところ全部。 あっという間に熱を持って。 頬を撫でる手が髪を絡め、大きな手は耳を覆う。 「奏、」 「……っ、……」 触れた唇はかすめるように短く。 おでこ同士くっつけたまま囁かれたのは、 「……キスしていいか?」 次の言葉にふっと息が洩れた。 「ふふっ、事後報告」 「いいや、もう一度、」 後頭部に回った手が髪を絡めて、 目を伏せれば再び落ちたぬくもり。
/94ページ

最初のコメントを投稿しよう!

463人が本棚に入れています
本棚に追加