第1章

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「なっ……」 何を言ってるの? そう言いたいのに、声にならない、 会いたい? 私に? どうして今? 「どこにいる?」 「えっ……」 「どこ?」 「どこって……」 「今すぐ行く、どこにいる?」 「そ……」 そんな……突然の出来事に、混乱してしまい、無意識に頭をフルフルと振る、滲む視界。ドキドキして壊れそうな心臓。 と……、 「みひろっ」 初めて呼ばれた名前に、嬉しくて、涙が溢れた。 「うぅっ……」 堪えきれない嗚咽。矢島君が気付かないはずがなくて……私に急いで近づいてきた。 「えっ? 何? 柏木さん? なんで泣いてるの?」 泣いているのを見られたくなくて、私は顔を背けた。と、電話の向こうで、 「矢島、うぜぇ……」 低く唸るようなコージの声が聞こえた。
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