第1章

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「もしもし……」 少し震えた声になってしまい、電話の向こうのコージに、気付かれたかもしれないと一人焦る私。 「柏木っ、」 余裕のない声で呼び捨てにされた。 珍し……いつもは、柏木さん、っと呼んでいるのに、 なんだか、声も焦っているように聞こえる――、私の気のせいだろうか……? 「柏木っ」 早口にもう一度、名前を呼ばれた。 「あっ……」 はい、と返事を返そうとして、 「会いたい――」 聞こえた言葉に頭が真っ白になった。 すべての雑音が消え、全神経が耳元に集中する。 「へっ…?」 思わず漏れた驚きの声に、かぶせるようにして、 「今すぐ、会いたい」 私の好きな声でコージが言った――。
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