第1章

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プップッ♪ かすかに聞こえた、軽いクラクション。ハッ顔をあげ、窓の外に意識を戻す。到着した兄が、右手を軽くあげ、私に合図を送っていた。雑誌を置いて、慌てて自動ドアをくぐる。 中から手を伸ばして開けてくれた兄が、 「みひっ、お帰り♪」 そう言って笑った。 相変わらずの妹溺愛っぷりに、思わず苦笑い。兄は歳の離れた妹の私を、昔から可愛がってくれていた。だから、迎えに来て、と言う妹の我儘にも、怒ることなく二つ返事で、嫌な顔せず迎えに来てくれる。 私の私生活に干渉しすぎる感は否めないけど……兄はいつも私を助けてくれている。 そして……今も……助けようとしてくれる。 苦しいほど、泣きたい気分の私の気持ちをすぐに察して 「頭撫でてやろうか?」 なんて、ふざけたことをわざと言って笑わせようとする。 私は、半泣きになりながらも、吹き出しそうになった。
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