第1章

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 ソニアから出るのが難しいのだ。俺は、細かく機体に指示を出すと、ほぼ自動操縦の要領で、小型機を出した。  次は、俺が飛び出す。飛びかけた瞬間、激しい光に包まれた、次に爆音が響く。ソニアに襲撃かと、防御壁を出したが。光った瞬間に出したので、これだけ近いと間に合ったか分からない。  黒い煙が空中に在った。破片が空から、降ってくる。  先に浮いている筈の、小型機が無かった。 「…無い」  大神が走ってきて、俺の無事を確認してから、空を見ていた。 「大和が襲撃されたかと思ったが…」  見事に一機、消えている。 「ソニア、どこから発射されている?」 「ビルの屋上からだ」  小型機を、撃ち落としたのは誰だ。緊急避難命令が出ていて、空を飛べなくなっていた。走って、街中を抜け、該当のビルの屋上に到着した時には、誰も居なかった。 「この付近に、監視カメラはあったか?」  監視カメラの映像には、黒い服を着た男性らしき人影が、気ままにギターを演奏している姿が映っていた。 「ダミー映像か」  監視カメラの映像を全て集め、影の位置、窓に映ったもの、全て繋ぎ合わせると、数人の人影が、機材を運び込み、半日以上、ビルの屋上でソニアに向かって銃を構えていた。 「治安がいいことに、慢心していた」  周囲の監視を怠っていた。俺のミスだ。鬼城の者を、一名、失ってしまった。  飛行場に行くと、場所を借り、預かっていた小型機を、亜空間経由で全て出した。駐車代金などと考えている場合ではない。客からの預かり機を持ったままでは、戦う事ができない。  一気に引き渡し処理を済ませると、爆破されてしまった小型機は、ソニアに搭載していた小型機にて代替え、弁償処理とした。性能、機能、価格共にグレードが上のものを用意したので、客からの文句は無かった。文句が無くても、これは信用の問題だ。黙って泣き寝入りするわけにはいかない。 「ソニア、城は止めだ。船に戻ってくれ」  そして、これは、鬼城の信用の問題でもある。犯人を捕まえなければ、星には帰えらない。  街中のビルの屋上から、地面を見つめる。犯人の特徴は覚えた。どんなに、小さな点であっても、判別がつく。ビルの内部は、監視カメラ経由で、犯人の姿を検索し続けていた。 「見つけた」  街中の花屋の店員。にこやかに接客しているが、見間違う筈もない。  ふらりと、店の前に立つが、店員は顔色一つ変えなかった。
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