第1章

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 ガウラ住人が戻ってきていた。街も回復し、人も元通りになったように見えた。でも、体育館に居た子供たちは、今も病院に居た。  最後に見舞いに行くと、元気に走り回っていたが、やはり栄養失調と、精神が病んでしまっているとの診断を受けていた。  夜中に急に泣きだし叫ぶ。僅かな寒さで、パニックになるのだそうだ。 「相変わらず綺麗だな、兄さん。鬼城、調べたよ」  あの時の子供だった。 「助けてくれて、ありがとう」  鬼城は金で動く連中で、礼はいいのだが、やはり、ありがとうを言われると嬉しい。 「俺、レスキュー隊になる」  叶うといいなと思う。その子の片目は、割ったガラスが突き刺さり、無くなっていた。皆の食料を確保していたのだろう。他にも、沢山の子供が何かを失っていた。 「もう少し早く、助けたかったな」  後悔はいつも、過ぎてからだ。 「鬼城に要請があったのは、十日前だ。準備期間もあったし、最速だった」  でも、被害者には遅かっただろう。  回復した街を通り、中央ビルに行く。市長から礼状と賞金を貰った。あれこれの爆破は止むを得なかったとして、お咎めはなかった。  そもそも、爆破、そこを重要視されるとは思っていなかった。事前調査の甘さを痛感した。  ソニアに乗り込み、鬼城に帰るべくガウラを飛びたった。そこに、緊急の通信が入っていた。三日前の緊急通信だった。任務中を理由に、鬼城本部は、俺達当ての通信を分別していた。 「一人、消えた」  帰還者で亜空間に苦しんでいた三人の内、一人が体半分を残し消えた。トイレも図式の中でと言われて、一人が反抗して出かかった、その時、埋もれるように下半身が消え、叫びながら上半身が死んでいったらしい。  緊急ではないと判断した基準は、起こってしまった事で、変えられない事実だからだそうだ。それでも、仲間の死を、少しでも早く知りたかった。  この事実を踏まえて、救助しても亡くなるのでは意味がないとの、意見も出ていた。  鬼城、二十三年で腐ったのかもしれない。現場に出ない指揮官も、多くなっていた。昔は、死体でも灰の一部でも、必ず持ち帰り葬るから行ってくれと、指揮官が現場で言った。そこに固い絆があった。  現場でしか分からない、生きて帰りたい、けれども役目を果たしたいような、葛藤があるのだ。指揮官が部下を見ない、そんな鬼城なんて必要ない。  六沙、こんな鬼城の中で、頑張っていたという。
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