第1章

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 糸が滑る、スペアの糸も出すかと、体制を変えた。しかし、しまったと思った時には、落下していた。  新たに、糸を繰り出し、落下スピードを緩める。しかし、スピードがなかなか減速しない。俺は、背からプロペラに激突していた。  暫し、動きたくない程の激痛が走る。でも、落下により、かなり下まで到達した。現在位置を確認すると、動力制御室まで、後二層といったところだった。  走る。換気口から中に降り立つと、直ぐに警報が鳴った。レーザーが俺を狙ってくる。レーザーで良かった、光線を曲げながら避け続け、動力制御室の扉の前まで来た。軽くドアを爆破し、中に入り込む。  ざっと、全体を見回す。どうにか操作できそうだった。  順番に、動力を稼働させる。 「出雲、頼む」  動力が回復したのならば、温度制御ができる。 「袈裟丸、頼む」   全身血まみれになってしまった。立っていると、血だまりが出来る。この状態で、この部屋から出たら、レーザーに焼き殺されてしまいそうだった。  動力制御室のセキュリティのみ、自力で止めてはいるが、いつ復帰するのかは分からない。  袈裟丸から、困った通信が入った。 「大和。この窓、爆破しても自動で修復します。破壊から修復完了までの時間、一秒を切ります」  セキュリティが解除できない。それでは、制御室まで辿り付けない。しかも、この動力も止められてしまう可能性もある。 「御厨、袈裟丸と合流を頼む。出雲、セキリィティを避けながら、制御室を目指してくれ。当麻、ちょっとヘマした。動けん」  通信は、ソニアを介していた。そのソニアの通信を、勝手に翔一が傍受していたらしい。  何故当麻を呼んだのか?怪我だ。それも、かなりの重症。必ず助けます、翔一の頭脳が、全稼働してしまったらしい。御厨の救けで、(御厨、セキュリティの隣の部屋を、爆弾で吹っ飛ばした)袈裟丸が中に入ると、通信をオンにしただけで、翔一のプログラムが流れだし、セキュリティが全て解除された。  当麻は、セキュリティが切れると同時に、動力制御室に飛び込んできた。 「怪我ですね、万能薬がありますよ」  ふふふと笑うのが怖い。でも治療は確かで、直ぐに楽にはなった。 「傷跡も残しません。完璧に治療します」  血を見ると、当麻、人格が変わるらしい。ずっと楽しそうに笑い続けている。 「ありがとう」  でも、当麻の止血のおかげで、動けるようになった。
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