第1章

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 急いで鬼城に帰ると、葬儀の最中だった。残った二人は、どこか覚悟を決めていた。 「俺達、死にたくありません」  仲間の死を見続けたであろう、必死さがあった。 「俺は右腕、こっちは内臓が亜空間と同化しています。俺、右腕諦めます。亜空間から切り離してください。でも、鬼若衆には残してください。義手で頑張ります」  包帯の撒かれた右腕は、時折消え、すさまじい痛みが残るのだそうだ。神経もズタズタのようで、既に動かないらしい。 「内臓は切り離す事は無理です。だから、俺は同化します。制御します」  二人は、自分達で決めたらしい。 「分かった」  同化は比較的簡単にできるが、この亜空間は孝太郎のものという現実が残る。 「同化」  腹に手を当てると、定着させる。孝太郎が来いと命令すれば、亜空間に同化している内臓が消える。でも、亜空間を切り離しても内臓は消える。  最後の方法は、孝太郎から亜空間を奪い取ることだ。 「伊万里、制御頼む」  生きるためには、亜空間を制御するしかない。制御は、亜空間使いのほうが上だ。  切り離しは、俺だけの力では無理だった。 「当麻」  隣に当麻を座らせる。 「意識、消しました」  俺は、潜んでいる亜空間を消し去る、同時に腕が千切れて消えた。 「当麻、治療を頼む」  これで、亜空間に悩むことはないが、右腕が消えてしまった。  辛い選択が多すぎる。  何度も鬼城の本部に足を運んだが、捜査の許可が出そうにも無かった。鬼城にも、ちゃんとしたチームもあり、捜査の再開に協力的でもある。  でも何より、鬼城の弱体化が目立つ。特出した能力者が、全く出ていなかった。管理のために、扱い難い能力者を潰してしまうからだ。 「これではダメだ」  ああ、そうかと、やっと納得した。五羅も同じ思いで、鬼同丸を立ち上げたのだろう。当時は、鬼城はここまで弱体化していなかったが、外部出身というだけで、追い出す慣習があった。  鬼同丸で取り込め。そういうことなのかもしれない。 「百武、新人のリスト貰って来た。教育頼むね」  鬼同丸の光を消してはいけない。 「分かりましたが、教官は貴方たちでしょう」 「あと、当麻、特Sに戻した。鬼同衆で貰うことにした」  また勝手にと百武が怒る。この星を、少しずつ変えていかなければならない。仲間を救うために。 天陽不座 終わり おまけ ディナー
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