壱里塚

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【ぷちいべ からくり屋敷】 「頭の境目は額」 ただただ広いだけの畳の間。 その入り口で手にした紙に書かれていたのはそれだけで。 「ここ迄来て只の部屋というのも却って薄気味悪いわね……私達は何をすれば良いのかしら」 情報を得んと紙を透かしながら呟いた時、部屋を見回していた華焔が声を発した。 「壱蕗さん、襖がふたつ並んでます…○と×、でしょうか」 彼女の指差す遥か先を目で追って嘆息ひとつ。 漸く手にした紙の意図する所を知った。 「あら、罠に飽き足らず知識まで試されるお屋敷だとは思わなかったわ」 低く笑い、共に此処まで辿り着いた少女に向き直る。 「お恥ずかしながら分からないのだけど…華焔は如何?」 「私、ですか……えっと、そうですね…」 恐らくは真面目な性分なのであろう。 幼いながらに知識経験を総動員し、様々に呟きながら眉を寄せて考えている。 その姿を見、ふと思う。 表情を作る事が出来る部分は、眉から下であると。 即ち顔と頭の境目は額ではなく眉の辺りなのではないだろうか。
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