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「………ノッチェさん、これ…………」
突然手渡された小さなかわいらしい包み
ノチェの住処での出来事である
うどんが小さな両手で受け取ったそれは、空色の袋に白いプリント
レースのリボンで口が縛られており、中身は分厚いのか全体的にふっくらしていた
彼女の問いに彼は答える
「あ?ああ、ホワイトデー」
「………」
うどんの顔が一瞬で青ざめた
自分の作ったチョコ(?)でノチェがしばらくの間昏睡状態になったことを、彼女は忘れていなかったからだ
「何つー顔してんの?おもしろ」
「わたしにとって何一つ面白い要素などない。本当に申し訳なかったと思っている。どんな仕返しをされても仕方がないし、覚悟はできているだから…」
「何言ってる?あの時のことは別に怒ってねぇし。ちょっとびっくりはしたけど」
「……」
椅子に座り足を組んだノチェは、軽く呆れたような表情をしながら手渡したものを指差した
「いいから、開けて?」
うどんは最初躊躇したが、ノチェは黙って目で促す
恐る恐る包みを開けると
「…ノッチェさん、これ…」
中身は小さなカップケーキが1つ
「俺にしては上出来?」
「!これ、ノッチェさんの手作りか?」
「そ。まぁ、気分転換?たまにはこういうのもいいんじゃねって思って。材料集めんの、結構大変だったけど。食って」
超絶めんどくさがりな彼がまさかカップケーキを作るとは思っていなかった
うどんはノチェの意外な行動に驚きを隠せずにいた
「早く食って。感想、聞きたい」
「あ、あぁ…」
普段と何かが違うような彼に戸惑いつつも、一口食べる
「…おいしい」
その一言に満足そうに「そう」とだけ言って、ノチェはそっぽを向いてしまった
機嫌がいいのか何なのか、ノリが普段と違いすぎてなんだか調子が狂うと思う反面、自分の作ったものと彼の作ったものの出来の違いに沈むうどんであった
そんなあるひと時のお話……
終
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