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「じゃあ、わかった。この話は無かったことで」
きっぱりとそう言えば、彼女は「え?え?」と瞬きを何回もした。突然の切り替わりについていけないようだ。
出来れば、彼女と結婚したかったが、無理なら仕方ない。他を探すとしよう。
一ノ瀬の名前を使えば、適当に何人かは引っかかるだろう。その中で、愛を求めない人間を探すことは難しいかもしれないが、まだ時間はある。地道に行くか。
「……もう夜も遅いし、解散しようか」
そう言って、帰り支度を始めれば、彼女が「……嘘でしょ」と声を漏らした。
「ん?なに、まだ食べ足りない?君、女の子なのによく食べるね」
「いやいやいや……!何ですか、そのマイペース!さっきまでのあれ、やっぱり嘘だったんですね!?私のことからかってたんですね!」
声を荒げる彼女に、俺は否定の言葉を投げかける。
まさか。真剣だった。
彼女が了承さえしてくれれば、俺はすぐに結婚の手続きをした。
だけど、断られてしまってはもうどうにも出来ない。流石に勝手に手続きは出来ないし、彼女がお金や地位に靡くようには見えない。
母親の為、とでも言えばどうにかは出来るかもしれないが。
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