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「昨日の夜の事だけど…まず何から話そうかなぁ…」 婚姻届のコピーを持ったまま、固まる私に彼、一ノ瀬さんは昨夜の事を話し始めた。 「バーに案内してもらって、一緒にお酒を呑んだのは覚えてる?」 「はい…あの、お礼に一杯と言われて…」 「それで、一緒にテキーラを呑んで。そしたら、君、面白いぐらいに酔っちゃって!」 テキーラ!? 私は元々、お酒はそこまで強い方ではない。だから呑むお酒の種類はチューハイとかカクテルばかりで。 それをテキーラだなんて…そりゃ酔うわ。思い出しても笑えるのか、一ノ瀬さんは楽しそうだ。 この男…性格悪いし、意地悪だ。 「酔った君は面白いぐらい自分の事話してくれて…それで意気投合して結婚する事になったのかなぁ?」 「何で疑問系なんですか!」 「んー?何か、色々あって全部説明するの面倒だなって」 最低だ…この人。 私の一生がかかっているというのに、それを面倒だなんて。 怒りでマグカップを持つ手が震えていると、一ノ瀬さんは「ごめんごめん、冗談だよ」と笑った。 冗談に聞こえないんだよ…!
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