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「どこ行くの」 「いいから黙ってついて来て下さい」 「別にいいけど、手……」 「逃げないようにです!……あなた、マイペースというか自分勝手すぎます……ちょっとは私の話を聞いてください」 自分勝手、マイペース、自分では自覚していたけど、他人から言われるのは初めてだ。 手を繋いだまま彼女の後ろを大人しくついて行く。振り払おうと思えば簡単に振り払えたけど、それはしなかった。 「………お兄さん、もう少し自分を大切にした方がいいですよ。結婚しよう、なんて軽々しく言って私が本気にしたらどうするつもりだったんですか」 前を向いたまま彼女が俺に問いかける。 「どうするって……俺は君と結婚したいから言っただけで、本気にしてくれなきゃ逆に困るんだけど」 「だから、そういうのが……お兄さん、結婚できれば誰でもいいんですか?」 誰でもは良くない。それもちゃんと言ったつもりだったのだが、まるで伝わっていないようだ。 そもそも俺自身は結婚なんてものに興味がないし、したくもない。 だけど、あの家で生きて行く為には必要なことで、あの女を生かしておくという俺の目的の為にも必要なことだから、結婚しようとしている。
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