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契約書、そう一番上に書いてある紙をじっくり読んでいく。
そこには、この結婚に後から文句を言わない事や、一方的な理由での離婚は認められないだのと、様々な事が書いてあった。
そして、下にはしっかりと私の字で名前が書かれており、横には印鑑まで押されてあった。
その契約書の中のある一文に、思わず目が止まる。
”お互いに恋愛感情は持たない”
「恋愛感情を持たない…?」
思わず口に出してしまった。
「ああ、そっか。君は何も覚えてないんだっけ」
「これ、どういう事ですか」
「んー?もう一度同じ話をするのは面倒だけど、仕方ないか。」
彼は苦笑いをした。
いや、何かごめんなさいね。
生憎何も覚えてないもので。
「一ノ瀬グループって分かる?」
一ノ瀬グループ…?
その言葉で、私は彼の名前をどこで見たのか思い出した。
ああ、そうだ。
”一ノ瀬夏樹”って、あの有名な一ノ瀬グループ会長の息子だ。
つい最近、そんな内容をニュースで見た。
次期社長のお兄さんの顔は、出ていたのに彼の顔は出なかったので、どんな人なんだろうと少し興味を持ったのを覚えてる。
名前を見た時の違和感はこれだったのか。
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