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「家、というか母親がうるさいんだよねぇ。そろそろ結婚しろって、毎日毎日。見合い話も沢山持ってきて、本当うんざり」 彼は本当に鬱陶しそうな顔をしながら話す。 「だから適当に選ぼうと思ったんだけど。どの女も、一ノ瀬の名前が欲しいだけのくせに…”愛して”なんて、気持ち悪い事まで言ってきて」 彼は一瞬、目を細めた。 「キスもその先も、気持ちがなくたって出来るのに。皆それでは、満足してくれない。どれだけ理解ある振りをしてても、最終的に結婚するなら気持ちがなきゃ駄目だなんて…本当に反吐が出る」 先ほどまでの一ノ瀬さんからは、想像も出来ない冷たい声、目。 私は何も言わずに、ただじっと見つめる事しか出来なかった。 「だけど、君とだったら俺の望みは叶う。それに、君にとっても美味しい話でしょ?傷付かずに結婚出来るんだから」 確かに、そうだ。 酔った勢いとはいえ、心の何処かでそう思ってるのは事実だから。 だけど、それで本当に良いの? 私にとっても、一ノ瀬さんにとっても、本当にこの結婚は望み通りなの? 分からない。 こんな時にどうすればいいのかが、分からない。 「今、君が何を言おうと。昨夜の君の言葉が本音だよ。…それに、もう契約はすんでる」 私の心を見透かしたように一ノ瀬さんは言った。
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