17/19
前へ
/122ページ
次へ
昨夜、私が一ノ瀬さんに何を言ったのかは覚えてない。 だけど、きっと。 今、私が思っている事全て、この人は知っているのだろう。 この醜い感情も、全て。 だからこそ彼は、この結婚を私に持ちかけた。 それならーーーー。 「一ノ瀬さん」 私は自分の左手を彼に差し出した。 「指輪、はめて下さい」 私の言葉に一ノ瀬さんは笑った。 そして、ポケットから指輪を取り出し、私の薬指にはめてくれた。 そうだ、私はずっとーーーこれだけが欲しかったんだ。 私の左手で光る指輪を見つめ微笑む私に、「ダーリンって呼ばなくていいの?」と、彼は意地悪そうに笑った。
/122ページ

最初のコメントを投稿しよう!

309人が本棚に入れています
本棚に追加