309人が本棚に入れています
本棚に追加
「あっ、ごめんなさい…」
肩をぶつけた相手は、同い年か少し上ぐらいだろうか。
スーツを着た好青年だった。
少し色素の薄い髪に、黒のメガネをかけていて、顔はモデル並みに整っていた。
おお…何だかアニメの世界に居そうな人だ。
思わず見つめてしまうと、男の人はにこりと笑った。
「此方も不注意でしたので、お気になさらず。ところで、一つお聞きしたいのですが…」
そう言って彼は、携帯の画面を此方へ向けてきた。
画面の中には見慣れたバーの外観が映っていた。
「この店がこの辺りにあるはずなんですが、ご存知でしょうか?」
「あぁ、ここなら…この道じゃなくて、あっちの道を…」
このバーは確かにちょっと分かりにくいんだよなぁ。
私は身振り手振り男の人にバーの場所を一生懸命伝えたが、どうやらイマイチ伝わってないようだ。
昔から説明するのが下手くそだと、よく怒られたっけ。
私は少し悩んだ後、店の前まで案内しようかと提案してみた。
本音を言えば早く帰って、ゲームをしたい。昨日回収出来なかった誠くんのハッピーエンドを見たい。
だけど、困ってる男の人を見捨てるわけにはいかない。
というか、私の説明が下手なのが申し訳なくて。
男の人も一瞬、私の提案に悩む素振りを見せたが、このまま私の説明だけではお店に着かないと分かったのだろう。
少し頭を下げながら、「…お願いしてもいいですか?」と言った。
私は笑顔で了承した。
最初のコメントを投稿しよう!