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いくら恋愛に無縁な私だって、左手の薬指にはめられた指輪が、どんな意味を持つのかなんて分かっている。
既婚者と…してしまった。
顔から血の気が引いていくのが分かった。
初対面の、しかも既婚者。
これって不倫?不倫だよね。
これから本妻に訴えられて、慰謝料とか請求され、会社の人達には白い目で見られて…!
これから起こるであろう事を想像して、青ざめる私に男は首をかしげた。
「なに、どうしたの?顔が赤くなったり、青くなったり。大変だねハニー」
「仕方ないじゃないか!不倫なんて…って、ハニー!?」
そういえば、起きた時もハニーって呼ばれた気がする。
この男、妻がいるというのに私をハニー呼ばわりだなんて…!
相当遊び慣れてるな、と軽蔑の目で見つめていると、予想外の事を口にした。
「君が言ったんじゃない。結婚したらハニーって呼ばれて、ダーリンで呼びたいって」
「えっ…?結婚?」
「本当に覚えてないんだね、君。俺逹、昨日結婚したでしょ?まあ、婚姻届を出したのはさっきだから…正確には今日だけど」
そう言って微笑みながら、指輪を眺める男。「君にも起きたらはめてあげようと思ってたんだ」なんて、楽しそうに。
結婚…?結婚ってあの、結婚だよね?
彼氏も居ない、毎日恋愛ゲームばかりしている私が結婚?
しかも、道案内をしただけの名前も何も知らない男と。
夢であってくれと願いを込めて、頬を力いっぱいつねった。
痛いっ!
つまり…夢じゃないって事で…
「い、いやあああぁーっ!」
私の叫び声がまた、部屋中に響き渡った。
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