7/19
前へ
/122ページ
次へ
いくら恋愛に無縁な私だって、左手の薬指にはめられた指輪が、どんな意味を持つのかなんて分かっている。 既婚者と…してしまった。 顔から血の気が引いていくのが分かった。 初対面の、しかも既婚者。 これって不倫?不倫だよね。 これから本妻に訴えられて、慰謝料とか請求され、会社の人達には白い目で見られて…! これから起こるであろう事を想像して、青ざめる私に男は首をかしげた。 「なに、どうしたの?顔が赤くなったり、青くなったり。大変だねハニー」 「仕方ないじゃないか!不倫なんて…って、ハニー!?」 そういえば、起きた時もハニーって呼ばれた気がする。 この男、妻がいるというのに私をハニー呼ばわりだなんて…! 相当遊び慣れてるな、と軽蔑の目で見つめていると、予想外の事を口にした。 「君が言ったんじゃない。結婚したらハニーって呼ばれて、ダーリンで呼びたいって」 「えっ…?結婚?」 「本当に覚えてないんだね、君。俺逹、昨日結婚したでしょ?まあ、婚姻届を出したのはさっきだから…正確には今日だけど」 そう言って微笑みながら、指輪を眺める男。「君にも起きたらはめてあげようと思ってたんだ」なんて、楽しそうに。 結婚…?結婚ってあの、結婚だよね? 彼氏も居ない、毎日恋愛ゲームばかりしている私が結婚? しかも、道案内をしただけの名前も何も知らない男と。 夢であってくれと願いを込めて、頬を力いっぱいつねった。 痛いっ! つまり…夢じゃないって事で… 「い、いやあああぁーっ!」 私の叫び声がまた、部屋中に響き渡った。
/122ページ

最初のコメントを投稿しよう!

309人が本棚に入れています
本棚に追加