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「まじでか?」
俺は思わず大きな声をあげてしまった。
「ああ、だから気を付けた方がいいと思うよ。」
そう、優しく忠告してくれたのは差江島龍斗。そして、先程から不機嫌そうにそっぽを向くのは、その妹の美都穂である。
彼らは今、日本陸軍病院に入院している。
先日、ウイルスにより突然変異を起こし、凶悪な化物と化した動物――キメラが町を襲い、それに立ち向かうべく、人間と体の一部を機械化されたドールと言われる人間のペアで活動する民間機関員が駆り出され、その多くが負傷するという事件が起きていた。
彼らもその負傷者の一人なのである。
俺、甲野明は二人の見舞いに来ていた。
たわいの無い会話を繰り広げていたのだが、龍斗にあることを教えられたのだ。
それは――
『今日は地熊厘(じぐまりん)の機嫌が悪いらしい。』という事だ。
それがどうした?
そう思うかもしれない。
だがよく考えてほしい。
あの地熊厘だぞ。
俺の親権者であり、日本一の天才で、死体好き、唯一の楽しみは俺をいじる事。
そんな彼女が機嫌が悪いとなればそれはそれは恐ろしい事だ。
しかも今日彼女に会いに行く予定があるのに……
タイミングが悪すぎる。
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